エアコンAirest(エアレスト) Product Designer

24時間365日、人にやさしいエアコンへ。L-P

SAS 事業本部
国内デザインスタジオ
Product Designer
奈良 俊佑
Shunsuke Nara

新卒でシャープに入社して12年。5年目までは奈良・郡山でコピー機などの開発に携わり、大阪・八尾に移ってからは主に白物家電をデザインしています。これまでにエアコン、空気清浄機、ヘアドライヤー、咀嚼計アプリケーションなど数々の製品を手がけてきましたが、中でも開発に4年を費やした「Airest」は、大きな課題をブレイクスルーした忘れられない製品となりました。

インタビューアー
大伸社ディライト ライター
黒川 陽子
Yoko Kurokawa

日本のメーカーとして、次々と新しい製品を世界に送り出すその裏側には、きっとたくさんの想いや夢があるはずです。今、シャープデザインがこだわる「笑顔の品質」とは?あの商品のデザイナーって、どんな人?率直に問いかけて、デザイナーさんの隠れた熱い想いを紐解いていきます!

-Airestってエアコンでもあり、空気清浄機でもあるんですね。

はい、「空気清浄機と呼べる唯一のエアコンをつくろう」というのが当初からのコンセプトです。もともと、エアコン分野でのシャープの優位性を探るため、消費者に「エアコンを選ぶときに重視することは?」というアンケートをとっていました。すると「信頼できるメーカーかどうか」の次に多かったのが、「空気浄化能力」。さらに「空気浄化能力はどのメーカーが優れていると思うか」を聞くと、たくさんの方がシャープの名前を挙げてくださったんです。おそらく「プラズマクラスターイオン」が認知されているからだと思うのですが、やはりそこを当社の強みとして強化しようと。

-でも「空清」ボタンが付いたエアコンって、すでにけっこう出ていませんか。

…と、思うでしょ!でも、実はそれって「空気清浄機」とは言っていないはずです。今のエアコンは空気もしっかりキレイにしてくれる、と勘違いされがちなんですが、正々堂々「空気清浄機」と呼べるものは、かなり厳しい業界の規格をクリアしなくちゃいけない。そのためには中の構造から抜本的に変える必要があるので、開発にものすごく時間がかかりました…。2015年から開発の話が出てリサーチを始め、コンセプトが固まったのが2016年。発売にこぎつけたのは2019年12月。これだけの期間を費やすのは、家電では稀なことです。

-それだけエアコンにとって「本当の空気清浄」は難しいテーマなんですね。

他社も、何度もチャレンジしては頓挫しているはずです。そもそも、エアコンの効率を高めるには「いかに空気を抵抗なくたっぷり吸い込むか」が大事。その空気の入り口を、空気清浄機と呼べる集塵効率の高いフィルターでふさぐというのは、エアコンにとっては一番やっちゃいけないことなんです。

-ええっ、タブーへの挑戦…!

いやもう、本当に大変でした(笑)。まず、コンセプトに基づいて必要な機能とインテリア性を考えながら、1枚のパネルが美しく浮かび上がるようなデザインのファーストモデルを作ったんです。四季の移り変わりや、朝昼晩の暮らしを思い浮かべてシーンスケッチを何枚も描きました。この、製品企画の早い段階でカタチに落とし込む、ということに大きな意味があったと思います。

-と言いますと?

正直、最初は社内でも「空気清浄機と呼べるエアコンって、言うは易しだけど…」という空気だったんですよ。そのまま立ち消えてもおかしくないほど、難しいテーマであることは誰もがわかっていた。ところがファーストモデルをプレゼンしたら、みんなが共感してくれて。上層部も「絶対にこれを商品化してくれ!」と目の色が変わり、一気に火がついたんです。デザインにはプロジェクトを引っ張るだけの力があるんだなと、あらためて感じました。

-でも、そこからが本当の苦労だった、と。

まさに…。フィルターによる空気抵抗は、吸い込み能力の高いシロッコファンを付けることで解決しました。でも他にも、エアコン内部の汚れの原因になる結露をどう防ぐとか、省エネ性能をどうクリアするとか、問題は山積みで。何度も「もう無理なんじゃ…」という雰囲気になりました。でも、当初のコンセプトは絶対に譲れなかったし、「空気清浄機のリーディングカンパニーであり続ける」ということを、上層部も開発メンバーもあきらめたくなかったんですよね。

-それだけに、完成したときの達成感はひとしおだったのでは。

Airestが発売になったときは、プロジェクトチームで打ち上げに行きました。みんなで飲んで、祝って、「おい奈良、マイク持ってなんか喋れ」みたいな、ちょっと古い浮かれ方をして(笑)。

-わぁ、目に浮かびます。いいチームですね。

開発メンバーと技術メンバーが本音で話し合って、あきらめずにチームでやりとげたからこそ、一体感が生まれたんですよね。今でもお互いにリスペクトしていますし、腹を割って話せる。それが次の開発に結びついていくんだな、と。そこに気づけたことが、このプロジェクトを通してのいちばん大きな学びです。

-Airest、暮らしの中でどんなふうに使っていただきたいですか。

開発中、「空気清浄機と呼べる唯一のエアコン」というコンセプトを守りつつ、もうひとつ守りたかったことがありました。それは「シャープらしい、人へのやさしさ」。シャープのエアコンは昔から、大きいルーバー(羽根)で気流を遠くまで飛ばして、ゆったりと冷気を下ろすことを心がけているんです。人がいるところを目がけて強い冷気を吹きつけると、とくに女性は寒かったりするじゃないですか。やさしく風を送りながら、しかも空気をキレイにしてくれるので、たとえば赤ちゃんのいるご家庭にもおすすめです。夏の冷房、冬の暖房だけと言わず、空気清浄機を生かした送風機能もフル活用して、24時間365日、整った空気の中で気持ちよく暮らしていただきたいですね。

-エアコン以外にも、いろんな製品をデザインされていますよね。そもそも、奈良さんはどうしてこの道へ?

小さい頃から、両親の影響でものづくりが大好きだったんですよ。とくに父は、家の中にある工作部屋で鉄道のジオラマや模型を作っていました。僕も当時流行っていたミニ四駆を作ったり、バス釣りのルアーを作ったり。シャープに入社してからも、エアコンに限らずいろんなプロジェクトでものづくりをさせてもらってます。家電のデザインは面白いです。

-なるほど~。入社から今までに、デザインへの考え方って変わりました?

そうですね、開発のフェーズが進むにつれて、どんどん良くなるデザインと、悪くなるデザインがあることを知りました。良くなるのは、初動のコンセプトがしっかりしていて、その軸がブレないように考えられたデザイン。悪くなるのは表層的なデザイン。大事なのは形だけではなく、その形がもつ力で、ユーザーに何を感じてもらいたいのか、という目的です。そこに気づいたら、自己満足のデザインに固執することがなくなり、コンセプトの立て方から変わってきました。

-そういうことを、後輩のかたに伝えられたりもするんですか。

そうですね。デザインは手法にすぎない、目的と手法は違うんだ、ということはよく言っているかな。今はシニアデザイナーになって後輩と一緒に働くことが増えたので、「チームづくり」に面白さを感じています。スケッチが得意な人、プレゼンが上手い人、それぞれのいいところを活かし合えるチームになればいいなと思っています。

-奈良さん、頼れるアニキ!って感じです。

あはは、どうなのかな、だといいんですけど。

-仕事一色の毎日ですか?お休みの日はどうされてます?

休日は、キャンプです!一人で行ったり、家族や友人と行ったり、とにかくキャンプが大好きで。大人数でも、ワイワイ騒ぐよりはのんびり過ごすタイプですね。音楽もかけずに、焚き火のパチパチ燃える音を聞いていたい。普段のデジタルな世界を離れた、アナログな世界を求めているのかな。家にいる休日も、キャンプで使いやすいように道具を改造したりするのが楽しくて。ポットの持ち手が熱くならないように、自分で革を縫いつけたりとか。

-やっぱりプライベートでも、ものづくりなんですね。

好きなんですねぇ。これからも、あまり固定概念とか、既存のものにとらわれないものづくりをやっていきたいです。いま、興味があるのは「素材」です。家電に使うメインの素材は樹脂なんですけど、樹脂以外にもまだまだ可能性があるんじゃないかなって。最近、協力会社さんとお付き合いする中で「天然素材のプロ」と話す機会が多いんですが、本当に勉強になります。素材ひとつからでも、家電のありかたは変えていけるし、変えていかなきゃな、と思っています。

こちらで紹介している製品の詳細はこちらからご覧いただけます。

※所属や内容は記事作成当時のものです。

エアコン Airest

IMAGE GALLERY

Designerʼs Voice一覧トップへ