Design Stories

IN HISTORY

歴史の中にシャープがある。デザインがある。

1958年(昭和33年) 水冷式クーラー

―歴史の中にシャープがある。デザインがある。ミュージアム40周年合同企画「IN HISTORY」―

こんにちは。シャープミュージアムの藤原です。このシリーズでは、ミュージアム説明員の藤原と中谷が、シャープの製品や歴史について自由に語ります。ほんの少しでもシャープの歴史にご興味を持っていただけましたら幸いです。

今回語るのは、1958年(昭和33年) 「水冷式クーラー<RC101>」です。

井戸水で空気を冷やすクーラー

スマートにのびた4本脚ですっくと立っているのは・・・昭和33年に発売された「地下水」利用の水冷式クーラーです!幅75cm、奥行き34cm、高さは84cmで、ちょっとした本棚くらいの大きさです。展示品としては大きいサイズですので他の製品と並べても目立っていて、堂々とした印象があります。

脚の上部に備えられた「箱」の中にあるアルミフィン付き熱交換器に冷たい井戸水を流して、前面の扇風機のファン2基を運転して室内空気と熱交換を行わせて涼風を得るという仕組みになっています。一年間を通じてほぼ一定の水温を保つ地下水を冷媒とするため、特に暑い夏、気温が高ければ高いほどよく冷える効果があります。価格は36,500円で、よく売れたそうです。当時のエアコンは20万円以上もする高級品でしたから、よく売れるのも納得です。(当時の国家公務員初任給(高卒)は6,500円)

4本脚の水冷式クーラー

当時の家電製品によく見られる、4本脚。テレビは特にこの4本脚スタイルが流行ったのではないでしょうか。高度成長の真っ只中、各家庭がこぞって給料の何倍もする家電を買っていた時代です。新しいテレビに贅沢品のステレオなど、これらは”家具調”と称され、高級感ある立派な細工のものが多かったと思われます。この流れを受けて水冷式クーラーも、4本脚で颯爽とした存在感あるデザインがなされたのだと思います。クーラーの内側に見える羽は、扇風機の羽を連想させますね。現代のエアコンと並べて見比べると面白そうです。

日本の夏に涼を求めて

その他、家の前や庭先に「打ち水」をして涼しい風が室内を通るように工夫したり、見た目にも涼しいように、鉢にたっぷりの水を入れて中を泳ぐ金魚を鑑賞したり、汲み上げた地下水に浮かべて冷やした夏野菜を食べたりと、水をうまく活用することで少しでも涼しく感じるように工夫したようです。屋外では、涼を求めて水辺に集まり、川のほとりや池の周りをそぞろ歩いて、そこを吹く涼しい風に当たったり、障子を全部開け放って川風を楽しんだりする「屋形船」などが流行ったそうです。キーワードは「水」ですね。「流しそうめん」、「ところてん」、「水ようかん」。なんだか夏の和の風物詩が並びます・・。

当時は、水冷式クーラーを通った水が排水ホースから放水されると、その勢いでタライに浮いたスイカがくるくる回っているという、そんな風物詩のような日常があったようです。う~ん、昭和ですね。

今回はここまで!次回は「1ビットアンプ」についてご紹介する予定です。

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このシリーズでは、シャープミュージアム説明員の藤原と中谷が、シャープの製品や歴史について自由に語ります。ほんの少しでも、シャープの歴史にご興味を持っていただけましたら幸いです。