Design Stories

IN HISTORY

歴史の中にシャープがある。デザインがある。

1934年(昭和9年) フォノラジオ

―歴史の中にシャープがある。デザインがある。ミュージアム40周年合同企画「IN HISTORY」―

こんにちは。シャープミュージアムの藤原です。このシリーズでは、ミュージアム説明員の藤原と中谷が、シャープの製品や歴史について自由に語ります。ほんの少しでもシャープの歴史にご興味を持っていただけましたら幸いです。

今回語るのは1934(昭和9年)電気蓄音機「フォノラジオ」です。

存在感ある落ち着いた佇まい・・・
88年前に手作りされたフォノラジオ(電気蓄音機)は、上部にレコードプレーヤーを備えた高さ83cm、横幅58cm、奥行き38cmのラジオです。

所有する喜び、愛でる喜び

「電気蓄音機」は略して「電蓄」と呼ばれました。「電蓄」というと、古い映画で見かける手回し式蓄音機を連想されるかもしれませんが、これは電動式。欧米からもたらされたラジオ・電蓄が日本人の技によって小型化、低価格化、デザイン性や機能性など多様な方向へと発展・向上する中、この電蓄は、優美さを愛でる高級品として一部の富裕層や百貨店、喫茶店、バイオリン店などで所有され、飾られていました。

印象的なのは、丹念に仕上げられたことが伝わってくる木製キャビネットです。ミュージアムの展示をご覧になったお客様に「この木はマホガニー?」と問われることが少なからずあります。残念ながら、もはや当時の電気蓄音機について、特にキャビネットの素材に関する情報はほとんど残っていませんでした。断定はできないのですが、国内の楽器メーカー製との記録から推定して、また、赤茶色い木目の色合いからしても、(当時楽器や家具といった調度品の加工に使用された比較的柔らかく風合いのある)マホガニーであろうと思われます。

もちろん、上部のレコードプレーヤーとラジオは自社製(Sharp Dyne)。この自信作であるレコードプレーヤーは、楽器や家具をつくる職人たちの手によって上質で優美な木製キャビネットで包み込まれ、調度品と呼べるまでに仕上げられました。かろうじて現存する当時のSharp Dyneフォノラジオの写真を見ると、ラインアップごとにそれぞれ違う職人の技が魅力的で、どれもいい表情をしています。

一点ごとにデザイン画が用意され、職人たちが彫刻・加工の技を競い合うようにつくりあげたフォノラジオ。技術と、芸術との融合が生み出した、愛でる価値をも加味した製品です。

変化を求めて止まないDNA

Sharp Dyneの資料を探していたら、かろうじて残る1冊の小冊子をみつけました。
昭和7年(1932年) 社名が早川金属工業研究所だったころ、おそらくご販売店にお届けしたと思われる冊子です。当時の文章を解読するのはいささか難しいのですが、一部を現代の漢字に変換してご紹介します。

・・・近代人は常に矛盾と変化を求めて止まないものであります。社会は極めて単純なる経路に因るところの結果を求むる一方、また極めて複雑変化に富める経緯に因りてその結果を期待せんと致します・・・

つまり、現代の人や社会は常に簡単で単純な結果を求める一方で、とても複雑に変化するものに対しても大いに興味を持つという矛盾を語り、人は本質的に変化を楽しみ変化に期待するものだと書かれています。

この電蓄が作られた88年前も、変化を求めて止まないという人々の志向が、その時代のデザインや新しい技術を生み出し続けてきたのですね。

蓄電のレコードの音に癒される

ノイズのない、究極にクリアな音の再生を求めてデジタルへと進化してきたオーディオ技術・・・

けれども、ちょっと音飛びしたり、ジージジジと控えめなノイズで心を癒してくれるアナログなレコードの音。デジタル全盛の今だからこそいいなーと感じることはありませんか?

木のぬくもりと職人技がこんなにも美しい調度品から流れ出る、ジジジジ・・・から始まるレコードの音に包まれて、ゆったりしたひと時を過ごしてみたくなりました。

今回はここまで!次回はバブル期に登場した異色の調理家電カプセルレンジ「RE-2」について、ご紹介する予定です。

【シャープミュージアムは2021年11月で設立40周年を迎えました】
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このシリーズでは、シャープミュージアム説明員の藤原と中谷が、シャープの製品や歴史について自由に語ります。ほんの少しでもシャープの歴史にご興味を持っていただけましたら幸いです。