―歴史の中にシャープがある。デザインがある。ミュージアム40周年合同企画「IN HISTORY」―
こんにちは。シャープミュージアムの中谷です。このシリーズでは、ミュージアム説明員の藤原と中谷が、シャープの製品や歴史について自由に語ります。ほんの少しでもシャープの歴史にご興味を持っていただけましたら幸いです。
今回語るのは、1960年(昭和35年) トランジスタテレビ<TRP801>です。
「うわあ、かわいい!これ、今あったら欲しいかも・・!」と、ミュージアムへご来館くださった多くの方々から歓声があがります。ブラウン管の曲面も含めて全体的に丸みのある優しいフォルム。この「愛らしさ」や「レトロな感じ」が魅力でしょうか。
蓄電池を内蔵し、電源のない場所でも楽しむことができる「アウトドア」仕様で、連続3時間以上の受像が可能です。片手で運べる軽快さで、くっきりと見やすい8.5型。リビングから寝室への移動や、屋外で楽しむドライブのお供に・・など、当時のレジャーブームの波にいち早く乗って人気を得ました。
やはり注目はデザインですね。ツートンカラーの赤がぐっと引き立つメタルキャビネットで、脚部もハンドルも備えた軽快なスタイルは、いつでもどこでも持ち歩きたい気持ちにさせるような、テレビ本体のデザインに「魅せる」要素を備えた愛されるデザインです。
まさに当時は、この活力みなぎるデザインが求められていたと思われます。1960年(昭和35年)には、インスタントラーメンやインスタントコーヒーが登場し、飛行機の利用客も国内線が100万人、国際線も10万人を突破しました。「いつでも!どこでも!」と人々の行動範囲が外へ外へと広がっていく躍動感が感じられます。(ちなみにおそらくこうした外への関心拡大もあって1964年には海外渡航が自由化されました。)このような風潮の中、トランジスタテレビは、先に開発されたトランジスタラジオに裏打ちされた小型化技術で、サイズや機能、操作性など、デザインにおいてあらゆる角度からポータビリティを追求し、家庭用据置型と差別化を図ることでパーソナル化を提唱。家族の団らんや仲間との語らいに彩を添えるテレビとして、生活スタイルに大きな変遷をもたらしました。
このトランジスタテレビは、レジャーブームの波に乗って人気を得た一方で、持ち運べる特長を活かし、意外な場所で活躍しました。例えば台風とそれに伴う停電に備えての2台目テレビとしてや、電源の取れない病室での入院患者用のテレビとして、また、電波の届かない山間部でのアンテナ工事の際には「電界強度計」として、実際に映像をキャッチしながら最も良い電波条件の地点を調べる役割を担ったようです。工事現場で活躍するなんて頼もしいです。
今回はここまで!次回は「ラテカピュータ」についてご紹介する予定です。
【シャープミュージアムは2021年11月で設立40周年を迎えました】
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このシリーズでは、シャープミュージアム説明員の藤原と中谷が、シャープの製品や歴史について自由に語ります。ほんの少しでも、シャープの歴史にご興味を持っていただけましたら幸いです。