咀嚼計 bitescan(バイトスキャン)UX Designer

領域を越えて、見えてきた可能性。

SAS事業本部
BtoBソリューション事業統轄部
新規事業企画開発部
栗野 正雄
Masao Kurino

大学ではプロダクト・UI・サービスデザインを学び、シャープに入社。テレビのUIデザインや洗濯機のプロダクトデザインを経験し、入社5年目からはUXデザイン部門に移って数多くのUXデザインに携わりました。その中で、2019年からバイトスキャンの開発に参加したことをきっかけに、現在は新規事業を企画・開発する部門で新しいモノ・コトを生み出そうと取り組んでいます。

インタビューアー
大伸社ディライト ライター
黒川 陽子
Yoko Kurokawa

日本のメーカーとして、次々と新しい製品を世界に送り出すその裏側には、きっとたくさんの想いや夢があるはずです。今、シャープデザインがこだわる「笑顔の品質」とは?あの商品のデザイナーって、どんな人?率直に問いかけて、デザイナーさんの隠れた熱い想いを紐解いていきます!

-現在いらっしゃる「新規事業企画開発部」のチームでは、どんなことをされているんですか。新製品の開発がメイン…?

モノとしての新製品というだけではなく、そこから生まれるサービスや体験の創出も含め、ビジネスとして成り立つ事業を生み出していこう、という部門です。今は若手6人のメンバーでワイワイと、社内ベンチャーのような雰囲気で活動しています。

-以前は「UXデザイン部門」におられたんですよね。

そうです。家電や新規ディスプレイデバイスなど、さまざまな商品のUX・UIデザインに携わっていました。その中で「bitescan(バイトスキャン)」のプロジェクトに参画したことが、いま思えば自分の転機の一つだったかもしれません。その後、デザイン部門から離れて、新規事業企画開発部に所属するきっかけにもなったと思いますし。

-「bitescan」ですか。噛むことをスキャンする。

製品カテゴリーで言うと「咀嚼計」ですね。耳に引っ掛けて、食事などで自分が噛む回数やテンポなどを計測できるデバイスです。連動したアプリを使って、日々の噛むデータを記録し、蓄積することができます。このアイデアはもともと、入社3年目の社内研修の中で、同期の谷村さんが発案したものでした。彼はその後も取り組みを続けていたんですが、ある時、僕らがUXデザイン部門で取り組んでいたヘルスケアに関するリサーチに谷村さんが興味を持ってくれて、声をかけてもらったのがバイトスキャンに参画したきっかけです。

-参画されて、まずは何から取り掛かったんでしょう。

バイトスキャンを使うことになるであろう人、たとえば肥満ぎみの人や保健師さんなどにアンケートやインタビューを実施しました。また、バイトスキャンに興味を持っていただいた企業様へ訪問したりしていました。そういった生の声を聞くうちに、多くの気づきを得て、取り組みたいことがどんどん増えていきました。

-気づき、と言いますと?

バイトスキャンは、咀嚼をはかるための「計測機器」としてだけでなく、そこから生まれる「サービス」としての価値がより大きい、ということです。そこで、たとえば噛むことでキャラクターが一緒に動き、楽しみながら噛むことへ意識を向ける子ども向けのコンテンツ、といったサービスの展開にも力を入れていきました。咀嚼をはかることから広がる価値、そこをどう伝えるかは、チームのみんなでかなり整理をしたところです。

-確かに…。よく噛んで食べることのメリットは、いろんなサービスにつながりそうですね。

グッドデザイン賞に応募したのですが、そのときも、「噛むをはかり、気づき、行動を変える活動」というタイトルで、咀嚼計という「製品」ではなく「取り組み」として応募しました。当時は在宅勤務中で、オンラインのホワイトボードツールを使いながら、自分たちの取り組みをどう表現するかをチームのみんなで考えました。すごく時間をかけて議論や整理をしたんですけど、その後の事業展開の方向性を明確にする上でも、この時の内容がとても役立っていると感じています。結果として、2020年の「グッドデザイン・ベスト100」にも選ばれました。

-すごい!受賞すると認知度もアップしたのでは。

ありがたいことに大きな反響をいただきました。その中のひとつに、ある小学校からの問い合わせがありまして、そこから食育プログラムの開発がスタートしたんです。この取り組みは、バイトスキャンの開発当初から共同研究を行っている新潟大学と一緒に進めています。どうすれば子どもたちが噛むことに興味を持ってくれるか、チームで話し合ってプログラムの構成を作っていきました。咀嚼結果によってもらえるバッジやシール、ワークシートや資料など、子どもたちが親しみやすいように工夫しました。実際に小学校で実証実験を行ったのですが、子どもたちがバイトスキャンを使って楽しそうに学んでいる姿を見るとうれしかったですね。どのキャラクターのシールを貼るか真剣に悩んだり、アプリでゲットできるバッジをみんなで見せ合ったりしていて。

-か、可愛い…。それにしても栗野さん、かなり幅広い動き方をされているような。

もともと自分は、1つのことだけを突き詰めるタイプではないかもしれません。あまり領域を意識せず、その時々で周りの状況を見て適切に対応できるように、幅広い知識やスキルを身につけておきたいという思いがあります。特に少ないメンバーで新規事業を生み出すという場合には、開発フェーズによって考え方や役割を柔軟に変えていくことが大切なのかなと感じていますね。

-今はどんな取り組みをされているんですか。

バイトスキャン以外に、チームで重点的に取り組んでいるのはフェムテック※サービスの開発です。女性の生理用品のIoT収納ケースと連動して、月経周期を管理するサービスです。きっかけは、ある女性メンバーが、僕と谷村さんと3人でミーティングしている時に「こういうアイデアがあるんです」と話してくれたことです。それにみんながすごく共感して、本格的にプロジェクト化することになりました。今、製品とアプリのプロトタイプを作って実証実験を行っているところです。

※Femtech(フェムテック):FemaleとTechnologyを掛け合わせた造語。女性の健康課題をテクノロジーで解決する製品やサービスのこと。

-ふだんの会話からプロジェクトが始まる…的な、チームの雰囲気がステキですね。

アイデアはいつも気軽に出し合っています。みんな若くて、新しいことにチャレンジするのが好きなメンバーばかりです。僕自身もデザインの領域を意識しすぎず、これからも全員とフラットな関係でアイデアを出し合いながら、スピード感を持って新規事業を生み出していきたいですね。

 

-期待しています…! ところで栗野さん、プライベートでも面白いものづくりをされているとか。

「電化美術」の活動ですね。もともとシャープのメンバーが多く所属しているアート集団で、2012年頃から活動をスタートしました。

-電化、というからには電気を使った作品を?

電気技術を使った美術表現というのが大きなコンセプトですが、仕事ではなかなかできないことをメンバーがそれぞれ自由に作っています。展示会を開くと、会社の人も見に来てくれましたね。

-たとえばこの作品は…虫?

はい、アルミ素材のカラダに、LEDの目玉が光る「アルミ虫」。
アルミ製品の工場でできる端材を活用しています。

-何かこう、クスッとなりますね。普段のお仕事とは、また違った面白さがありそう。

そうなんです。でも、仕事につながっている部分もありますね。僕は電子工作やプログラムにはそれほど詳しくないので、メンバーに教えてもらいながら作っていくと、技術的な大変さや面白さを体感できて、少しエンジニアの気持ちに寄り添えるような気がします。展示の企画やプロモーション、見に来てくれた方とのコミュニケーションなども、事業を展開する上で活かせていると感じます。最近、電化美術の活動はあまりできていないのですが、プライベートでも仕事でも新しいことにチャレンジして、さらにいろんな領域での体験をしていきたいです。

こちらで紹介している製品の詳細はこちらからご覧いただけます。

咀嚼計 bitescan

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