Design Stories

IN HISTORY

歴史の中にシャープがある。デザインがある。

1999年(平成11年)1ビットアンプ

―歴史の中にシャープがある。デザインがある。ミュージアム40周年合同企画「IN HISTORY」―

こんにちは。シャープミュージアムの藤原です。このシリーズでは、ミュージアム説明員の藤原と中谷が、シャープの製品や歴史について自由に語ります。ほんの少しでもシャープの歴史にご興味を持っていただけましたら幸いです。

今回語るのは、1999年(平成11年) 「1ビットアンプ<SM-SX100>」です。

聞いてびっくり!こだわりの1ビット技術

1999年に生まれた1ビットアンプ。
1ビットアンプは、一般的には重厚な金属の箱というイメージが主流だった高級オーディオアンプの世界に登場した、まったく新しい技術とデザインを採用したシャープオリジナルの高級アンプです。

このアンプに使われた1ビット技術は、それまで難しかったΔΣ変調原理で音を再生することを可能にしたシャープオリジナルの画期的な技術でした。アナログ音声を1秒間に280万回測定し、個々の信号が直前の信号レベルよりも大きいと「1」、小さいと「0」とシンプルな1ビット方式で記録していくことで、音の微細な変化も滑らかな曲線のごとくデジタル信号へと変換されます。ゆえに、デジタル処理でありながら、限りなく原音に近く繊細で自然な音を再現できるのです。

なんだか難しいお話になってしまいましたが、百聞は一見にしかず(百見は一聞にしかず?)ミュージアムにお越しいただき1ビットアンプのデモ音を耳にした多くの方々が、「こんなリアルな音が、デジタルで表現できるの?」と驚かれました。それもそのはず、1ビット技術は、CDの64倍のきめ細かさで音を再生できるのです。

いい音を視覚的に伝えるデザイン

「1ビット(one-bit)」という名称の軽快さに呼応するように、微細なヘアラインで軽快感がありながらずっしりと金属を感じるスリムなアルミボディ。そのボディを両脇から抱えるように挟み込むピーコックグリーンのパネル脚は、先端がスパイクのように尖り、20kgもある重いボディを小さな接地点で支え振動や共振を防ぎます。アルミの削り出しで作られた中央のボリュームつまみもまたずっしりと重く、その何とも言えない安心感のある回し心地にも、細やかなこだわりが伝わってきます。

このように、見ても触っても良質な音を出してくれそうなデザインは、ピュアで凛とした印象があり、23年経った今もなおココロ惹かれます。当時の1ビットに懸ける設計者やデザイナーたちの並々ならぬ情熱を感じます。

音楽を愛する人々との出会い

1ビットアンプ紹介当時、海外からの方も含め、来館者は主に取引先企業や学会出席で来日された研究者、投資家など。ピュアオーディオの愛好家も少なからずおられました。(※ピュアオーディオ:高品位な音質を重視するオーディオ装置。またはそうした装置を構築する趣味。)1ビットアンプの原理が原音を忠実に再現する仕組みをご説明し、実際にその音をお聞きいただいた際にお客様が驚き感動されるご様子に何度も立ち会うことができました。なかでも「ΔΣ変調の原理で音を再生できないか」と考えておられた研究者の方が来場された際には、ΔΣ変調による1ビット技術でシャープがアンプを実現したことを目の当たりにしてとても驚き、感激しておられた姿が印象的でした。このように1ビットアンプ(SM-SX100)を通じて出会えた感動は今でも忘れられない思い出です。

羽ばたく1ビット技術

その後デジタル処理でありながら、限りなく原音に近い音を再現できる1ビット技術は、省エネ性にも優れた設計で小型化もはかれることから、小型オーディオや情報端末など、高音質が求められる様々な機器に組み込まれていったのです。

 

今回はここまで!次回は「トランジスタテレビ」についてご紹介する予定です。

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このシリーズでは、シャープミュージアム説明員の藤原と中谷が、シャープの製品や歴史について自由に語ります。ほんの少しでも、シャープの歴史にご興味を持っていただけましたら幸いです。