Design Stories

IN HISTORY

歴史の中にシャープがある。デザインがある。

1987(昭和62年)電卓SPARKY

―歴史の中にシャープがある。デザインがある。ミュージアム40周年合同企画「IN HISTORY」―

こんにちは。シャープミュージアムの藤原です。このシリーズでは、ミュージアム説明員の藤原と中谷が、シャープの製品や歴史について自由に語ります。ほんの少しでもシャープの歴史にご興味を持っていただけましたら幸いです。

今回語るのは、1987年(昭和62年) 電卓SPARKY「WN-30」です。

色もカタチもとびっきりポップな電卓 SPARKY

少し小さめの折り紙みたいな73mm×73mmの正方形に、厚さ8.5mmという大きさは、手のひらにちょうどいい感じ。

楽しさを演出するギミックとデザイン

オイルショックを経て経済が安定成長期に入った1970年代後半の日本では、すっかりカラーテレビが定着。80年代に入ると「よく働き、よく遊ぶ」大人たちが活躍し、テレビゲームやカラオケといった娯楽の楽しみも拡大、人々の明るい気持ちが盛り上がり、街には原色を使ったファッションが流行していました。

そんな時代に登場したこの電卓、「手にする人の気分を明るく元気にしたい」という時代の風を感じるデザインです。

3種のカラーバリエーションから、どれにしようかなーと選ぶ楽しさも想像できますね。
私なら・・きっと自分用にブラック。友人へのプレゼントにはグリーン。家族にはホワイト。・・かしら。

友人にプレゼントするグリーンは、正方形が斜めにすっぱり分かれ、片方の三角形が鮮やかなグリーにビビットイエローで躍動感のある”SPARKY” ロゴが踊ります。もう半分の三角形は美味しそうなピンク色の表面に数値キーがおしゃれに配置され、ピンク色のキーパネルをスライドさせると・・・
なるほどぉ、ここに液晶表示とソーラーパネルが隠れていたのね!
パズルみたいで面白いー。ありがとう!・・・と、これを手にした友人を笑顔にしてくれそうです。

製品価値は機能からエモーショナルへ

電卓といえば、今から60年ほど前、世の中では大型コンピュータの研究が盛んに行われていた頃、シャープの技術者たちは、むしろ手のひらサイズで持ち歩ける小さなコンピュータを作ろうと考え、1964年(昭和39年)に電子部品を駆使して小型で卓上に置ける計算機を完成させました。これを“電子式卓上計算機”と命名し、のちに“電卓”と呼ばれるようになります。

最初の電卓は重さ25㎏でした。一方SPARKYは48g。ここまで軽く、簡単に持ち運びできるようにするために、半導体技術や液晶技術を駆使して、よりコンパクトに、より省エネに、より高機能に、より安価に・・・と、一時は33社ものメーカーが競い合いながら進化させて来ました。いわゆる電卓戦争です。

製品開発は、その小ささ、機能、コストなど技術的進化が上限に達し飽和し始めると、やがてデザイン性に特徴が表れ始めます。そしてこの傾向は特に、民生用、すなわち家庭や個人向けの商品に顕著に表れるのだそうです。

SPARKYも電卓が17年でカードサイズにまでコンパクト化され技術的な進化が飽和したのち、カタチの面白さやファッション性に富んだ色使いなど、スペック以外のエモーショナルな価値づくりにより生まれた製品なのです。

SPARKY(キラキラしている、生き生きとしているという意味)のネーミングのとおり、きらきらと弾けるような笑顔で人を元気にするツールへと進化したのですね。

今回はここまで!次回は「液晶ミュージアム」についてご紹介する予定です。

【シャープミュージアムは2021年11月で設立40周年を迎えました】
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このシリーズでは、シャープミュージアム説明員の藤原と中谷が、シャープの製品や歴史について自由に語ります。ほんの少しでも、シャープの歴史にご興味を持っていただけましたら幸いです。