Design Stories

IN HISTORY

歴史の中にシャープがある。デザインがある。

1995(平成7年)LCフォント

―歴史の中にシャープがある。デザインがある。ミュージアム40周年合同企画「IN HISTORY」―

こんにちは。シャープミュージアムの藤原です。このシリーズでは、ミュージアム説明員の藤原と中谷が、シャープの製品や歴史について自由に語ります。ほんの少しでもシャープの歴史にご興味を持っていただけましたら幸いです。

今回語るのは、1995年(平成7年) 液晶表示用「LC(液晶)フォント」です。

これは何という漢字でしょう?

何の漢字か読めますか?



大きい字のままでは何と読むかわかりにくいですよね。
しかし小さくしてみると、

あら不思議。「情報機器」と読めませんか?
さきほどの2つの漢字はLCフォントの「報」と「機」でした。
大きな字では読めなかった漢字が、小さくすると不思議と読める…これがLCフォントの魅力です。

普段ミュージアムで展示品の説明をさせていただくと、製品の特長的な機能や、懐かしさを感じる質感など、どうしても外観を中心とした説明が多くなりがちです。ですが、それぞれの製品の中にある、外からは見えない技術も、外観と同じくらい進化し続けています。今回ご紹介するLCフォントも、製品の価値をグンと上げた「目から鱗」の面白い技術です。

少ないドットで「読める」文字をつくる

1990年頃、電子手帳の時代は、スケジュール管理もしたい、語学辞書の機能もほしい、占いもしてみたい・・と、やりたいことがいっぱいあっても、製品本体のメモリー容量が小さかったので、用途別のメモリーカードを作り、本体にこれを抜き差しして活用するという工夫をしていました。

やがて、メモリー容量が大きくなって、いろいろなソフトウエアが本体に搭載できるようになりました。しかし当時はまだまだ画面が小さくてキメが粗かったため、カタカナ、ひらがな、アルファベットくらいしか表示できませんでした。そこで、粗く小さな画面でも文章表示ができるLCフォントの技術が開発されたのです。

<液晶の歩み展示コーナー>

LCフォントは縦8ドット×横8ドットの64個のドットで、どんなに画数の多い文字も表現します。人間の目で起こる錯視や、もともと人が記憶している文字のイメージを大切にしながら、極限まで文字を簡略化することで、画数の多い漢字を少ないドット数で表現することが可能になりました。この技術のすごいところは、当時主流だった解像度が低く小さな画面のガラケーにもたくさんの文字を一度に表示できるところでした。
そういえば先ほど紹介した「器」も、よく見たら真ん中の「大」が省略されていました。とても大胆だけれど自然に読めたことが不思議です。

 

<左から、静、点、竿、漆、農>

情報機器の発展とともに進化したLCフォント

当社のノートPC「メビウス」にも搭載されたLCフォントですが、8×8ドットから、12×12→16×16→20×20→24×24と、液晶技術の高精細化とともにラインアップを拡大していきました。
ラインアップを拡大・・・といっても、1書体につき約7000字が必要だそうです。つまり、ドット別5種類を開発したので、全部で約3万5千字。日本語書体の開発はとてつもない忍耐が必要ですね。

その他、「写メール」で知られるカメラ付き携帯「J-SH04」や、携帯で動画を観ることを定着させたサイクロイド型ワンセグ携帯「905SH」にもLCフォントが搭載されました。2001年には、さらに高度な表示技術に進化し、カラー液晶向けに開発された「LCフォント.C」が「携帯電話などに搭載される可読性を高めたオリジナルフォント」としてグッドデザイン賞を受賞しました。

ミュージアムへお立ち寄りいただいた際は、歴代の製品の中にぎゅっと詰まったシャープの独自技術にも想いを馳せていただければと思います。

【シャープミュージアムは2021年11月で設立40周年を迎えました】
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このシリーズでは、シャープミュージアム説明員の藤原と中谷が、シャープの製品や歴史について自由に語ります。ほんの少しでも、シャープの歴史にご興味を持っていただけましたら幸いです。