―歴史の中にシャープがある。デザインがある。ミュージアム40周年合同企画「IN HISTORY」―
こんにちは。シャープミュージアムの中谷です。このシリーズでは、ミュージアム説明員の藤原と中谷が、シャープの製品や歴史について自由に語ります。ほんの少しでもシャープの歴史にご興味を持っていただけましたら幸いです。
今回語るのは、1959年(昭和34年) トランジスタラジオ 「トランケット」です。
懐中電灯かな・・? いいえ、違うんです!
1955年以降(昭和30年代)は、戦後復興を果たした日本が急激に豊かになっていく時代です。
家庭に「モノ」が行き渡り、明るい電灯がともされた居間で家族そろってテレビを見る、新築の団地に入居する、マイカーを手に入れる、そういった物質的充足が目標となり、その充足で幸福を感じられた時代。人々の家電製品を中心とする耐久消費財への関心も高まると、性能や機能性だけでなく、形、色、手触りなども重要な購入の条件となり、デザインにも大きな注目が集まりました。
各メーカーは工業デザイナーを増員し、それまで設計の延長線上で開発技術者が手掛けてきた外装・外観は、技術者とデザイナーの協同作業へと変わりました。そして、そのデザインに大きな役割を果たしたのが、導入間もないプラスチックです!それまでの鉄板や木、ガラスに代えて、キャビネットにプラスチックを使用することにより、形や色の自由度が高まり、バリエーション豊富な独自製品が開発されるようになりました。
そんな豊かさや憧れを追い求める時代に、人々の関心を一気に「宇宙」へと高める大きな出来事が起こります!
1957年(昭和32年)、旧ソ連が人類初の人工衛星スプートニクを打ち上げたのです!
このことがきっかけで日本にもちょっとした宇宙ブームが到来します。デパートの玄関ホールや天井には、スプートニクの飾りが吊り下げられ、街では「宇宙バー」なる酒場がオープン、そしてお巡りさんは宇宙服で歳末の防犯を呼びかけたそうですよ。そんな宇宙ブームのなか、多くの家電にも宇宙を意識したデザインが取り入れられました。
1959年(昭和34年)にシャープが発売したのは、スマートな「ロケット」スタイルの「トランジスタラジオ」で、その名も「トランケット」。当時の価格は10,980円。(当時の公務員の初任給は10,200円)
色はグリーン(緑)とレッド(赤)の2タイプ。当時には新しい、スピーカー部分がそのままダイヤルツマミとなる方式が採用されています。専用アタッチメント(95円)で自転車やバイクのハンドルにも取り付け可能で、振動に強い設計なので悪路も平気。また、革ケース(590円)におさめると外出時やスキー、登山にも手軽に携帯できました。なんと、1台購入につき1枚の抽選券がついていて、「月旅行資金10万円(宇宙ですから・・)とテレビが当たる!」という懸賞付きでした。
人々の願いや思いが込められていますね・・子供たちもきっと大きな夢を感じたことでしょう。
現在、歴史館ではグリーン(緑)を展示しています。
ご見学中のほとんどのお客様が、まずは「二度見」され、近づいて「へえ~っ」とおっしゃって、小さく「これ欲しいな」とつぶやかれます。過去には「実物を見たくて来ました」と、わざわざ関東方面からお越しのお客様もいらっしゃいました。カメラを手にいろんな角度から撮影され、「なんか昔のアメ車みたいだな」と嬉しそうにコメントされ、熱い眼差しで見入っておられた姿が印象的です。
間違いなくミュージアムでは愛すべき展示品の一つです。
今回はここまで!次回は「AQUOSケータイ」についてご紹介する予定です。
【シャープミュージアムは2021年11月で設立40周年を迎えました】
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このシリーズでは、シャープミュージアム説明員の藤原と中谷が、シャープの製品や歴史について自由に語ります。ほんの少しでも、シャープの歴史にご興味を持っていただけましたら幸いです。