―歴史の中にシャープがある。デザインがある。ミュージアム40周年合同企画「IN HISTORY」―
こんにちは。シャープミュージアムの中谷です。このシリーズでは、ミュージアム説明員の藤原と中谷が、シャープの製品や歴史について自由に語ります。ほんの少しでもシャープの歴史にご興味を持っていただけましたら幸いです。
今回語るのは、1979(昭和54年) 超薄型カード電卓「EL-8152」です。
技術か、はたまた芸術か・・・
厚さ1.6ミリの当時世界最薄のカード電卓です。
タッチキーにステンレスを採用し、キラキラしていて繊細な印象です。
この電卓は薄さだけでなく美しいデザインも評価され、ニューヨーク近代美術館(MoMA)の永久保存品に選定されました。発売価格は7,900円。当時は「カード電卓」というカテゴリーが流行していて、どこまで薄くできるかを各社で競っていた時代です。
言うまでもなく、今や世界中の様々なシーンで使われている電卓ですが、思い起こせば1964年(昭和39年)、日本で最初の電卓は、シャープ(当時 早川電機工業)が開発した世界で最初のオールトランジスタ・ダイオード型電卓「CS-10A」で、キャッシュレジスターほどの大きな製品でした。
そして、この世界初オールトランジスタ電卓を皮切りに、1960年代後半~1970年代初頭の電卓市場へは、電機メーカー、事務機メーカー、計測器メーカーなど30~50社が続々参入。「電卓戦争」と呼ばれたこの熾烈な争いは、世界の産業史に残るような激しい価格競争と技術革新をもたらしました。
実際、市場は驚異的なスピードで成長し、演算素子は「トランジスタ」→「IC」→「LCI」→「超LSI」へと進化し、さらにシャープは「液晶」や「ソーラー」、「ボタンレス」技術を開発すると、今度は「手帳サイズ」→「名刺サイズ」→「クレジットカードサイズ」へと0.1mm単位で競い合う薄型化競争へ突入します。半導体技術、生産技術、低価格化、小型化軽量化、省電力化など、あらゆる面で行き着くところまで行ったとき、キャッシュレジスターサイズだった電卓は、わずか10年~15年足らずで、クレジットカードサイズへと見事な「軽薄短小」化を遂げました。
ICは、日本では電卓という民生品に大量に使われることで、半導体産業を育て、同時にマイクロプロセッサや液晶ディスプレイを生み出しました。そして日本の電卓戦争は、結果的にコンピュータの歴史にも大きな影響を与える結果となりました。
ミュージアムで一同に並んだ電卓を前にすると、次から次へと高いハードルに果敢に挑戦する当時の技術者に思いを馳せずにはいられません。ひとつひとつの電卓が当時の開発者の汗と涙の結晶ですね。
時を越えて「熱い思い」が伝わってきます。
今回はここまで!次回は水冷式クーラーについて、ご紹介する予定です。
【シャープミュージアムは2021年11月で設立40周年を迎えました】
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このシリーズでは、シャープミュージアム説明員の藤原と中谷が、シャープの製品や歴史について自由に語ります。ほんの少しでもシャープの歴史にご興味を持っていただけましたら幸いです。