Design Stories

IN HISTORY

歴史の中にシャープがある。デザインがある。

1991年(平成3年)液晶ミュージアム

―歴史の中にシャープがある。デザインがある。ミュージアム40周年合同企画「IN HISTORY」―

こんにちは。シャープミュージアムの藤原です。このシリーズでは、ミュージアム説明員の藤原と中谷が、シャープの製品や歴史について自由に語ります。ほんの少しでもシャープの歴史にご興味を持っていただけましたら幸いです。

今回語るのは、1991年(平成3年)液晶ミュージアム<9E-Hシリーズ>です。

アートのように壁に飾る

SFでしか見られなかった壁掛けテレビが現実のものに」とニュースで紹介された液晶ミュージアムは、今から32年前の19914月、約300人の報道関係者に披露されました。

この8.6型フルカラー液晶テレビ“液晶ミュージアム”。80型を超える大画面テレビを見ることができるようになった今となっては驚かれるかもしれませんが、3型→4型→5.5型・・・と液晶の大画面化が年々進んでいた当時、8.6型は民生用液晶の表示サイズとしては、最大でした。

この液晶ミュージアム<9E-Hシリーズ>には、インテリア性を重視したことから、3つのシリーズによる豊富なデザインバリエーションが用意されました。

発表会では、透明アクリルにデザインカットを施したクリスタルシリーズからゴールドとシルバー、アートシリーズからは、アンティークな油絵が似合いそうな黄金色の額縁に包まれたトラディショナルとモダン、加えて、先鋭的なデザインのオブジェシリーズなど、個性的な7つのモデルが披露されました。その名のとおり、まるで美術館のごとく会場の壁面に並んだラインナップは、ご来場くださった報道関係者の皆さまを魅了したことでしょう。

壁掛けテレビの開発から生まれた思いがけない珍品も魅力

実はシャープが夢の壁掛けテレビ開発に取り組んだのは1967年、テレビといえばブラウン管の時代でした。ブラウン管テレビは、四角い筐体の中に巨大な電球のようなブラウン管が横たわっており、管の中で、奥から手前に電子ビームを飛ばすことで、画面となる蛍光面に映像を映しだしていました。しかし、この電子ビームを飛ばす距離の分、テレビ筐体に奥行きが必要で、壁に掛けるには筐体が厚すぎたのです。

そこで奥から手前に発射していた電子ビームを、ブラウン管下から上に発射し、電子ビームが真上に到達する前に、偏向コイルで曲げて、表の蛍光面にあてるよう工夫しました。この仕組みで薄型構造でも映像を表示できるブラウン管を実現しました。ですが、思いがけない副産物も!偏向コイルで曲げた電子ビームはブラウン管の表だけではなく、裏にも飛ぶことが分かり、表裏両方に画面表示できる両面テレビが生まれたのです。

壁掛けテレビの実現に挑戦したら、意図せず生まれたのは両面テレビだった・・・という、ワクワクするような試行錯誤の時代が伺えます。

挑戦し続けた壁掛けテレビ、たどり着いたのは”液晶ミュージアム”でした

苦心して開発した薄型ブラウン管でも、夢の壁掛けテレビの製品化は実現しませんでしたが、決して諦めたわけではありませんでした。
両面テレビ開発(1967年)から数年後、シャープは世界で初めて液晶表示技術を電卓用途として実用化することに成功(1973年)。そこからさらに十数年後、ついに、夢だった壁掛けテレビは”液晶ミュージアム“として実現することになりました(1991年)。紆余曲折、試行錯誤しながらも、とうとう世界で初めての壁掛けテレビを完成させたのです。もちろん世界初の壁掛けテレビ”液晶ミュージアム“は、シャープミュージアムのディスプレイコーナーでじっくりとご覧いただくことができます。ぜひお立ち寄りください!

一方、シャープの壁掛けテレビ開発の中で生まれたあのユニークな両面テレビはというと・・・
夢を追いかけて奮闘する当時の研究者たちの豊かな発想を紹介すべく、
歴史館の一角に展示されご来場いただいた方々にいにしえの物語を伝えています。

 

今回はここまで!次回は「音声電卓」についてご紹介する予定です。

【シャープミュージアムは2021年11月で設立40周年を迎えました】
シャープミュージアム公式はこちら:https://corporate.jp.sharp/showroom/

このシリーズでは、シャープミュージアム説明員の藤原と中谷が、シャープの製品や歴史について自由に語ります。ほんの少しでも、シャープの歴史にご興味を持っていただけましたら幸いです。